チェーホフのボードヴィルに『熊』というものがあります。
チェーホフのボードヴィルの中では私が最も難しいと思う作品です。
小説で読むと勝手にポポーワとスミルノフを頭で作るので
彼らの状況を考えると笑えてくるのですが
実際に舞台になった瞬間に、それはとても難しくなります。
特にポポーワをやる女優の人は、自分の魅力をスミルノフに見せなくてはならない。
そして、スミルノフはそれにいつの間にか魅せられなければならない。
これって、相当難易度の高い演技だと思います。
ところで、ロシアに来てこの舞台を見て気がついたのは
ロシア語での発音がとっても有効に使われていることでした。
日本語にすると、くま、ですが
ロシア語で熊は、メドヴェージと発音します。
(カタカナで表現していますが音はカタカナ読みとは全然違います)
このメドヴェージという発音は、軟音という柔らかい音の母音で構成されています。
舞台の途中では、この単語を女優が連呼するのですが
この部分のポポーワが、非常にかわいいのです。
これって『熊』を演じる上で相当重要なんじゃないかな~と思いました。
日本語にするときに、くまをそのまま使うのか、別の生き物にするかはともかく
熊!と罵倒しては駄目なんだと思います。
罵倒しているんだけど
かわいさが漏れている。
そういった場面が出来ないと駄目なんじゃないかなと。
その方法が見つからないので困っています。
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