2016年2月2日火曜日

沼野充義『チェーホフ七分の絶望と三分の希望』読書メモ

 31p:『ねむい』を最後にチェホンテのペンネームを使ったのは最後である。それゆえ、これ以降娯楽作家チェーホフから本格的な作家チェーホフが誕生したということになる。

 とあるが、『ねむい』よりあとも5年以上ユーモア雑誌に書き続けていたし、チェホンテ以外のペンネームでは発表しているのに加え、作品のラインナップをみても娯楽作家であり続けているので、チェホンテの名前を辞めたことを理由にこんな風にはちょっと断定できない。本格的な作家活動が何を意味するのか難しいが、同年の1888年にプーシキン賞を取ったこと、翌年にサハリン島に突然むかうことの方が本格的な作家活動を始めたというにはふさわしいのではないか。もしくは伝記では何度も繰り返されてきたグリゴローヴィチの手紙からか。


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