2014年5月10日土曜日

ハイバネカナタ『マトリョーシュカ、その用法』@シアター711

観劇日は5月8日(初日)

下北沢のシアター711でハイバネカナタを観劇
上演時間は休憩無しの2時間10分。


 前作の『獏、降る』に続いての観劇。
かなり評価は厳しめ。


大枠となるシナリオは、バラバラになっている個々の人物のエピソードが最終的に集まっていき
エピローグまで繋がっていくという作りはなかなか凝っていて良かった。

だが、中心となるエピソードとその他のエピソードのバランスがあまりにも悪く
また、その一つ一つエピソードもそれぞれが非常に厚みのない薄いものばかりで
表現したいものと表現されているもの、そして表現すべきものの乖離が大きかったように思う。

とくに核となるべき江島と尾上の関係性が、江島と那須の関係性とまったく拮抗していない点。
あの最後の終わり方に辿りつくようなものが、そこに至るまでに起きていたのかというと
舞台上では起きていなかったと思わざるをえない。
一場面しかない江島と那須の喧嘩になるシーンが短さに比べてあまりに重いのに対し、
江島が尾上を思う気持ちと尾上の江島を思う気持ちがどう成立しているのかが
伝わらないまま、突然急にエンディングに入っていったようにしか見えなかった。
あのドタバタの中でもう少し二人の関係性を表現したりすることができたのじゃないだろうか。

医者の面々にしても、それぞれの腹の中に色々あるのは分かるのだが
それが外側に出ているものと内側にあるもので葛藤しているのかと言えばしておらず
台詞の中だけで対立しているものの行動は一緒で変わらず
立場にいる苦しみとか、仇を取る使命とか、状況説明ではなく、
その状況を役者の演技を通せる本で表現して欲しかった。
病院をめぐるエピソードについては、かなり役者の人たちの演技力に助けられていた。

一方で、医者たちの場面でのまとまりに比べると、食堂の面々のまとまりのなさが酷い。
ドタバタではなく、ガチャガチャしていて分かりづらいだけで
全員が何を言っているのか、なぜそうするのか、よく分からないし
動いたり喋ったかと思えばテンションとボリュームをあげるだけ。
きちんと作る場面とはっちゃける場面のメリハリがなく、演技それ自体も各々拙さが目立った。

時折、挿入されるコント的なやり取りに笑える場面も好きな場面もあったのだが
全体的に「気恥ずかしさ」を、勢いで乗り切ろうとするのはすべっていた。
笑えた場合でも役者のキャラによるもので、
内輪受けっぽいものにはついていけなかった人が多そうだった。

そして、これは初日だったから余計にそうだったのかもしれないが
主催がまったく舞台に乗っていない、間に合っていない感じで、かなり異質だった。

様々なものがもっと詰められる状態で、もったいなさを感じる
それを何よりも感じたのがとにかく残念。

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